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広島高等裁判所 昭和28年(ラ)14号 決定 1953年9月16日

抗告人 浜崎トシ子

相手方 株式会社佐村床材店 代表者 代表取締役 佐村河内謙一

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由の要旨は抗告人と相手方間の広島簡易裁判所昭和二十六年新(二)第一六号建物収去土地明渡事件の調停調書の執行力ある正本に基く強制執行につき相手方は広島地方裁判所に対し、請求異議の訴を提起し且つその執行の停止を申立て、同裁判所はその理由ありとして昭和二十八年八月二十日該強制執行の停止決定をなした。ところが簡易裁判所の調停調書についての請求異議の訴は民事訴訟法第五百四十五条の規定を準用すべきもので、その訴は訴訟物の価格如何に拘らず第一審の受訴裁判所である当該簡易裁判所の専属管轄に属する。従つて原審は右請求異議の訴につき管轄権なくこれに基いてなした本件強制執行停止決定も亦不適法であるから、本件抗告に及んだと謂うのである。然しながら、民事訴訟法第五百四十七条第二項所定の強制執行停止決定をなす管轄裁判所は、受訴裁判所即ち、異議の訴訟が現に係属する裁判所の謂であるから該訴訟係属後は仮令受訴裁判所に右訴訟につき管轄権がないとしても管轄裁判所に移送される迄の間は右係属中の裁判所が強制執行停止決定をなし得るものと解するのが相当である。右は急迫なる場合は裁判長がこれをなし執行裁判所も亦此の権利を行使することが出来ると云う同条第三項第四項の規定の法意からも首肯できることである。而して本件請求異議の訴訟が原審に提起され係属していることは抗告人の申立自体に徴して明かであるから原審がなした本件強制執行停止決定は適法であり、本件抗告は尓余の点を判断する迄もなく理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文のように決定した。

(裁判長裁判官 植山日二 裁判官 佐伯欽治 裁判官 松本冬樹)

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